先日、京都市立芸術大学で、塗師の赤木明登さんの特別授業があり
一般も参加ができるので、授業を聞いてきた。
赤木さんは、3年ほど前に知り、2年くらい前から気になっていた。
なぜ気になったのかは、この方が、とても人気があるからである。
斜陽産業ともいわれる漆業界で、この方の作品は購入待ちだと聞いた。
漆といっても、あふれかえる漆器、のなかで、
なぜ、この方のものが、求められているのか。理由が知りたかった。
1年くらい前に本を読んだが、そのこたえはぜんぜんわからなかった。
(本はそれほどひきこまれなかった)
だから、この機会に、行こうとおもった。
授業の題は”器の理(ことわり)~工藝のゆくえ~”
かたい題名である。
2時間座って、授業をきいた。
はじめの5分くらいは、つまらなかったが
自然体で、ゆっくり、自分のおなかの下から
あふれるように出てくることばが
耳に不快感なく、すっとはいり、すこしずつひきこまれた。
とくにおもしろかったのは、
その形にある理由をつかむ(知る)ことが
器の生命力をつかむということとつながるんだという話。
器には、一見無駄に見える、形(突起など)のものがある。
実際に作っていると、その無駄な形に気が付く。
(なんでこんな手間をかけるんだ。めんどくさい)
その時に疑問に感じたことの理由を調べると
ちゃんと納得できる理由がみつかるらしい。
例えば、室町時代の漆器に、器の口(縁)に、丸いふくらみのある漆器
があったらしい。
その器が気にいって写した(おなじものを作った)。
ふくらみをつくろうとすると、大変な手間だった。
その手間をかける意味がぜんぜん分からない。
そこで調べると、もともと漆器が普及する前の鉄器の形状にもそういう
ふくらみがついている器があった。薄くすると強度的に問題のある鉄の素材の特性上、
ふくらみをつけた。その鉄器を写し、漆器をつくったため。
使われる素材が変わっても、そのふくらみが残ったのだと分かった。
そういう風に、形には理由があって、それをつかむことで
自分の表現の選択肢がひろがっていく。それが器の生命力をつかむということ。
初めて聞いた話だったがすっと入ってきた。
過去からつがれた形には、ちゃんと理由があって、それを知ることで
自分の意思で手放す、変えることができるようになる。
赤木さんは、自分の感じた疑問を、遡って調べ、
調べたことを鵜呑みにせず考え、自分なりに確かめられて、
自分の実感のある解釈(軸)をもっている。
話のなかで、何度も、「一般的にはこういわれているけどぼくは~」
「この本にはこう書いてあったけどぼくは~」という独自の解釈の話があった。
自分の腹におちた事だから伝わってくるんだと思った。
結局、人気の理由はわからなかったが、おもしろかった☆